イイダ傘店展覧会
「 糸から 」 開催報告
2023年9月30日~11月5日に山梨県富士吉田市のFUJIHIMUROにて展覧会を開催いたしました。
こちらで展覧会の模様を一部ご紹介させていただきます。
ご来場いただいた皆さま、気に留めてくださった皆さま、誠にありがとうございました。
【 朱子縞の傘 】
展覧会のテーマに選んだのは、山梨県富士吉田市の宮下織物さんで作っていただいたオリジナル生地の傘「朱子縞」。
カラシ色のような深い黄色地に紺の縁取り。
よく見ると縞模様のラインが入っており、この部分は朱子織で織られています。
光沢と盛り上がりのある縞模様がアクセントになっているため、この布を「朱子縞(しゅすじま)」と名付けました。
まだイイダ傘店を始めたばかりの頃、蚤の市で出会った古い時代の傘を再現しようと持ち込んでつくってもらった、思い出深いジャカードの生地です。
展示では、染糸見本から発想した、糸から布、布から傘になるまでの過程をインスタレーション形式で発表した『朱子縞の部屋』、ジャカード生地の傘ができるまでの記録映像を上映した『映像の部屋』、イイダ傘店のものづくりを紹介した『傘の部屋』の3部屋に構成してご覧いただきました。
会場ではテキスタイルデザインを活かしたグッズ、傘のポップアップショップも開催。
市内で行われたハタオリマチフェスティバルに合わせて、秋の受注会も開催しました。
【 朱子縞の部屋 】
このインスタレーションでは、織り上げられた布と織られる直前の経糸の状態とで空間を演出しました。
糸と布、糸から布に切り替わる様子を布のトンネルをくぐり抜け、表や裏、上から下から眺め、一本一本の糸から成る傘の世界を体感していただきました。
【 映像の部屋 】
生地作りも技法や工程により産地は様々で、日本各地の職人の仕事を経て作り上げられます。
今回、映像に収めた「朱子縞」の生地作りも染め、整経、撚り付け、織り、防撥水加工…と職人のリレーを経て出来上がっていきます。
普段は目にすることのない生地作りの裏側を、本展覧会のために特別に制作された映像でご紹介いたしました。
映像作品「糸と布とひと」
撮影/編集:石原大輔
撮影:吉田周平
織り:宮下織物株式会社
撚り付け:武藤光義
整経:奥博整経
染め:大明見協染
協力:株式会社装いの庭
【 糸染め見本 】
この生地は経糸の色を縞ごとにあらかじめ染め分けて織る”先染め”という技法で作られます。
“先染め”は、糸作りに近い感覚で、糸の段階で織りあがる生地をイメージする想像力もとても大切になります。
こちらでは2007年当時宮下織物さんから送られてきた朱子縞の糸染め見本を展示しました。
実際に織る前に、この糸染め見本を見ながら織りあがる布を何度も何度も想像します。
【 傘の部屋 】
店舗のないイイダ傘店が毎年開催してきた展示受注会。
日傘、雨傘、晴雨兼用傘…これまでに発表してきた傘は400種類以上。
全てオリジナルテキスタイルで制作しており、傘のデザインは布作りとも言えます。
そんな歴代の傘や原画、スケッチとアトリエの様子を展示いたしました。
【 部品 】
傘というとやはり生地がメインのようにも見えますが、
その生地を支える骨やパーツたちがなくては、「傘」という姿にはなれません。
たくさんの部品から成る傘を分解して、小さな一つ一つの部品を可視化して展示いたしました。
一本の傘が出来上がるまでには、まず小さな一つの部品が作られるということを感じていただければと思います。
【 アトリエ再現 】
傘作りとデザイン作業を同時におこなっているイイダ傘店ならではのアトリエ。
その空間をイイダ傘店を始めたばかりの頃に作業していた6畳一間のアパートの一室に見立ててお届けしました。
傘作りの制作現場であるアトリエの様子を、実際に使っている裁断台や道具を用いて再現いたしました。
また、そのアイディアの元になる日常のスケッチ等も展示いたしました。
引き出し内にはアイディアソースや資料、印刷物など…傘作りの断片が顔を覗かせます。
【 原画 】
テキスタイル作りには欠くことのできない原画。
実寸で描かれた大きなものやパターン作りの痕跡が見えるもの、
水彩絵の具を使ったものや色鉛筆のもの、職人さんに向けた指示が書かれたままのものも。
白い紙から始まるそれぞれの傘のストーリーをお楽しみいただきました。
【 受注会 】
ハタオリマチフェスティバルがおこなわれる2日間、イイダ傘店の受注会を開催しました。
本展覧会のために復刻した、朱子縞の傘のオーダーもお受けいたしました。
<展覧会概要>
イイダ傘店展覧会「糸から」
日時:2023年9月30日(土)~11月5日(日)
主催:ふじよしだ定住促進センター / イイダ傘店
会場:FUJIHIMURO
企画:株式会社装いの庭
会場構成:久米岬建築設計事務所
グラフィック:BEEK DESIGN
撮影/編集:石原大輔
撮影:吉田周平
後援:富士吉田市
助成:粟井英朗環境財団
協力:宮下織物株式会社
武藤光義
奥博整経
大明見協染
会場写真:砺波周平